自分で民泊許可申請!
ゼロから分かる旅館業許可申請マニュアル
4.施設の要件調査<消防法>
住宅や事務所を民泊に使用する場合、消防法の要件が変わり、必要な設備が厳しくなる場合があります。住宅や事務所の場合は、原則として特定の人しか出入りしませんが、宿泊施設の場合は不特定多数が出入りするようになるため、火災警報や避難の問題が生じるからです。
消防設備が消防法の要件を充たしているかは、消防署の立入検査があります。検査をパスしないと、許可申請の際に添付が必要な「消防法令適合通知書」が交付されませんから、要件をすべてしっかり確認して設備を整えなければなりません。
特定防火対象物とは
消防法上、建物は用途に応じて分類がされています。多人数が出入りする建物は火災リスクが高くなるので、「防火対象物」として扱われ、必要な消防設備が定められています。その中でも、不特定多数が出入りする飲食店や劇場などは、「特定防火対象物」として、さらに厳しい規制がなされています。民泊など宿泊施設は、不特定多数が出入りするため「特定防火対象物(「旅館・ホテル・宿泊所等(消防法施行令別表第1(5)項イ))です。
しかし、一戸建ては防火対象物ではありませんし、マンションは防火対象物ですが「特定防火対象物」ではないので、これらを民泊に使用する場合、消防法上の用途が変更になる場合があり、必要な消防設備が厳しくなるので注意が必要です。
防火対象物(特定防火対象物)に該当するかどうかは、建物全体のどの程度を民泊に使うかで異なりますので以下でご説明します。
①一戸建ての一部を民泊に使用する場合
1)民泊部分が建物全体の50%未満かつ50㎡以下の場合
「一般住宅」として扱われるので、消防設備の新規設置は原則不要です。
2)民泊部分が建物全体の50%未満かつ50㎡超の場合
アパートの一部の空室で民泊をする場合は、「特定複合用途防火対象物(消防法施行令別表第1(16)項イ)」として扱われます。
3)民泊部分が建物全体の50%以上の場合
建物全体が「旅館・ホテル・宿泊所等(消防法施行令別表第1(5)項イ)」として扱われます。
②アパート・マンションの一部を民泊に使用する場合
使用割合に関係なく、「特定複合用途防火対象物(消防法施行令別表第1(16)項イ)」として扱われます。
用途が(5)項イ・(16)項イ)に変わった場合、設置が義務づけられる消防設備が厳しくなります。以下、必要設備をご説明します。
消火器
建物の総床面積が150㎡以上の場合は消火器の設置が必要です。
また、地階、無窓階又は3階以上の階で50㎡以上の場合も必要です。
自動火災報知設備
すべての民泊部分に必要です。
CHECK
「特定一階段等防火対象物」に注意!
民泊部分が3階以上にあり、階段が屋内1系統しかない場合は、「特定一階段等防火対象物」になり、建物全体(民泊部分以外も)に自動火災報知設備の設置が必要になります。すでに設置されていればいいですが、他のすべての住民の部屋に後から設置させてもらうのは不可能に近く、民泊を諦めざるを得なくなります。
また火災報知器の受信機についても厳しくなり、再鳴動方式火災受信機の設置が必要になります。再鳴動方式とは平成9年に出来た方式ですので、それ以前に建てられた建物の場合は要注意です。
さらに、竪穴区画(階段部)の煙感知器を15mに1個だったのが、垂直距離7.5mに1個に増やす必要があります。
いずれの設備もコストが発生しますから、3階以上で民泊をやる場合はご注意下さい。
マンションの場合、述べ面積が500㎡以上(地下・無窓階は300㎡以上)で必要ならそもそも必須なので気にしなくて大丈夫ですが、500㎡未満(地下・無窓階は300㎡未満)の場合は注意が必要です。
1)延べ面積300㎡未満の場合
「民泊部分のみ」自動火災報知設備の設置が必要です。
この場合、簡易式(ワイヤレス)でOKなので(特定小規模施設用自動火災報知設備)、比較的費用は安く済みます。
2)延べ面積300㎡以上500㎡未満かつ民泊部分が10%超の場合
「建物全体」に必要で、ワイヤレスも不可のため、コストがかかります。
また11階以上のマンションの場合、11階以上の全階・全部屋に必要です。
その他、大きな建物(16)項イの場合、スプリンクラーや漏電火災警報器などの設置が必要になる場合があります。
避難器具
2階以上または地階に民泊施設があり、収容人数30人以上なら必要です。
また、上記「特定一階段等防火対象物」の場合は、収容定員が10人以上で必要です。
設置個数は収容定員100人毎に1個追加になります。
誘導灯
誘導灯は主に、
①避難口誘導灯
②通路誘導灯
③誘導標識
に分類され、原則としてすべての設置が必要です。
例外として居室から避難口が見通せる場合や避難口が近い場合など設置が不要な場合もあります。消防法に細かい規定があります。
マンションの場合は、誘導標識はすべて必要ですが、避難口・通路は地階、無窓階、11階以上の階のみでしたので、追加設置が必要になります。
なお、東京都の場合、100㎡以下の居室の出口には避難口誘導灯の設置は免除されます。
防火管理者の専任
建物全体の収容人数が30人以上の場合、防火管理者の専任・届出が必要です。
各事業所・テナントごとに必要なのでご注意下さい。建物全体で一人ではありません。
収容人数は、洋室の場合はベッド数+従業員数、和室の場合は、(面積÷3)+従業員数で算出します。
防火管理者になるには原則として資格講習を受ける必要があります。
防火管理者には、甲種と乙種があり、300㎡以上は甲種、300㎡未満であれば乙種の資格が必要です。ただし民泊部分の収容人数が30人未満なら乙種で大丈夫です。
講習は甲種が2日、乙種が1日必要なので、小規模の民泊施設なら乙種を取りましょう。
また地上3階以上の建物の場合、建物全体で1名の統括防火管理者を選任・届出しなければなりません。
CHECK
「特定一階段等防火対象物」に注意!
民泊部分が3階以上にあり、階段が屋内1系統しかない場合は、「特定一階段等防火対象物」になり、建物全体(民泊部分以外も)に自動火災報知設備の設置が必要になります。すでに設置されていればいいですが、他のすべての住民の部屋に後から設置させてもらうのは不可能に近く、民泊を諦めざるを得なくなります。
また火災報知器の受信機についても厳しくなり、再鳴動方式火災受信機の設置が必要になります。再鳴動方式とは平成9年に出来た方式ですので、それ以前に建てられた建物の場合は要注意です。
さらに、竪穴区画(階段部)の煙感知器を15mに1個だったのが、垂直距離7.5mに1個に増やす必要があります。
いずれの設備もコストが発生しますから、3階以上で民泊をやる場合はご注意下さい。