自分で民泊許可申請!
ゼロから分かる旅館業許可申請マニュアル

3.施設の要件調査<旅館業法>


物件の場所の調査がクリアしたら、次は物件施設が旅館業法・消防法・建築基準法の法令・規則の要件を充たしているかの調査です。

旅館業法の要件

民泊を営業許可を取るには、特区民泊や民泊新法を使う場合を除き、施設の所在地を管轄する保健所に申請をして旅館業法の簡易宿所の営業許可を取得することになります。

旅館業法では、民泊施設の要件が細かく定められており、もし充たしていない部分があれば、工事をして改造が必要です。

①面積要件

床面積

床面積の合計が33㎡以上(宿泊者が10人未満なら一人あたり3.3㎡以上)あることが必要です。床面積とは寝室・浴室・便所・洗面所・その他の宿泊者が通常立ち入る部分を含みます。

以前は宿泊定員に関係なく一律で33㎡以上必要でしたが、平成28年の法改正で、一人あたり3.3㎡以上に緩和されました。一律33㎡だとワンルームマンションはほぼ無理でしたが、内容によっては可能になったのは大きいです。

床面積のイメージ

客室有効面積

さらに客室有効面積の合計が定員一人あたり1.5㎡以上必要です。客室有効面積とは、寝室その他の宿泊者が睡眠、休憩をする場所のみの面積です。机・クローゼット・浴室・洗面などは含みません。

通常のシングルベッドが97cm×195cm=約1.89㎡ですから、すべてシングルベッドを使用する場合は特に気にしなくても大丈夫です。

客室有効面積のイメージ


床面積や客室有効面積が要件を充たしているかどうかは、測量器具を使って寸法を測り、求積図と求積表(算出根拠明細書)を添付して証明します。0.1㎡でも足りなければ不許可になりますから、正確な測量と求積計算が求められます。

大事なことは「内のり(壁の内側を基準に計測)」でしっかり実寸を計測するということです。建築図面などは「壁芯(壁の中心を基準に計測)」で計測していますので、実際の内のり面積よりも広く表記されていますし、内装図面も正確とは限りません。できればデジタルのレーザー測定器を使って、ミリ単位で測量しましょう。

面積要件とは宿泊定員のことであり、収益構造に直結します。人数を詰め込めば売上は上がりますが、快適な空間でなければ宿泊者に高い満足を与えることはできません。民泊サイトで低評価が増えれば閑古鳥か値下げしかなくなります。

単に要件をクリアしているかどうかだけでなく、常に収益を見据えてプランニングすることが大事です。

②設備要件

面積がクリアしたら、施設の間取り・設備のプランニングです。具体的な設備は自治体の各条例により差がありますので、必ず条例を確認し、保健所の担当者と綿密な打ち合わせ・調整が必要になります。

間取り・設備のラフプランが出来たら保健所で内容のチェックを受けます。まず間違いなく修正が入ると思いますので、指示に従って再プランニングをして下さい。何度かのやり取りの後、合格をもらえればプランは完成です。

フロントの設置

フロント(玄関帳場)は、住宅にはそもそもなく必ず工事が要るので悩ましい設備ですが、必要・不要は自治体により異なります。また必要であっても代替設備でOKな場合もあったりしますので、各自治体の条例に従って下さい。

フロントに限った話ではありませんが、民泊の営業許可は、他業種の許可に比べて実質的に判断されるという印象があります。つまり、実際の運営はどうするのですか?ということです。

条例上はフロント不要であっても、じゃあチェックイン・アウトや本人確認はどうするかということの具体的な説明が求められます。この部分のプランが曖昧だったり、何かあったときの危機管理をしっかり考えていないと許可はもらえません。

フロント不要の自治体であっても、総合的に考えてフロントを置いたほうが運営・管理がしやすいのであれば、フロント設置を検討する価値はあります。

管理人室

施設内に管理人室を作って、24時間(営業時間)体制で管理人を置くのが原則です。自治体によっては、管理人室を施設内ではなく近隣に置いても良かったりしますが、いずれにしても、何かあったときにすぐに対応できるかどうかが問われます。

緊急対応の方法、チェックインから入室までの案内、ビデオカメラの設置など総合的に管理体制を構築する必要があります。

トイレ

トイレの数は各自治体の条例で定められていますが、原則として各フロアに最低2つ以上必要になります。マンションの一室で民泊をする場合、ほとんどが1つしかないと思いますので、増設工事がマストになります。

ほとんどの自治体では、下記の数を定めています。

宿泊定員
5人以下  :便器2個
6~10名 :便器3個
11~15名:便器4個
16~20名:便器5個
21~25名:便器6個
26~30名:便器7個

男女の比率が50%:50%にしなければならない自治体もあります。

浴室

浴室の要件は自治体により差があります。シャワーでOKだったり、浴槽が必要だったり、1つで良かったり、男女最低1つずつ必要だったりマチマチです。

ユニットバスは基本NGです。簡易宿所はそもそも見知らぬ宿泊者同士が寝泊まりすることを想定して作られた法律です。誰かがお風呂に入っているときに、他の人がトイレに行けないというのは認められないのです。

洗面

原則として定員5人につき1つの洗面設備(給水栓数)が必要です。洗面も浴室・トイレから独立していなければなりません。理由は上記の通りです。

キッチンの流しを洗面にすることは可能ですが、その場合はキッチン機能を持たせることは出来ません。誰かが料理をしているときに、他の者が手を洗えないというのはダメです。ただしこれも自治体により運用が異なり、緩い厳しいの差があります。

客室には、外気に面し自然光が取り入れられ、かつ壁面に設けた窓(客室有効面積の10%以上を目安)が必要になります。