自分で民泊許可申請!
ゼロから分かる旅館業許可申請マニュアル

2.まずは物件調査から


候補物件が決まったら、まずはその物件が民泊を営業できる場所にあるのかを調査する必要があります。民泊はどこでも好きな場所で営業できるわけではありません。

①用途地域の確認



土地を何かに使う場合、たとえ自分の所有する土地であっても好き勝手に建物を建てることができません。法律で様々な制限がかけられており、その一つが土地計画法で定める用途地域の制限です。

用途地域は次の12種類に分類されます。

①第一種低層住居専用地域低層住宅の良好な住環境を守るための地域。
建築可能な建物:床面積の合計が50㎡までの住居を兼ねた一定条件の店舗や、小規模な公共施設、小中学校、診療所など
②第二種低層住居専用地域主に低層住宅の良好な住環境を守るための地域。
建築可能な建物:150㎡までの一定条件の店舗など
③第一種中高層住居専用地域中高層住宅の良好な住環境を守るための地域。
建築可能な建物:500㎡までの一定条件の店舗、中規模な公共施設、病院・大学など
④第二種中高層住居専用地域主に中高層住宅の良好な住環境を守るための地域。
建築可能な建物:1500㎡までの一定条件の店舗や事務所など
⑤第一種住居地域住居の環境を保護するための地域
建築可能な建物:3000㎡までの一定条件の店舗・事務所・ホテル、環境影響の小さいごく小規模な工場など
⑥第二種住居地域主に住居の環境を保護するための地域。
建築可能な建物:10000㎡までの一定条件の店舗・事務所・ホテル・パチンコ屋・カラオケボックス、環境影響の小さいごく小規模な工場など
⑦準住居地域道路の沿道等において、自動車関連施設などと、住居が調和した環境を保護するための地域。
建築可能な建物:10000㎡までの一定条件の店舗・事務所・ホテル・パチンコ屋・カラオケボックス、小規模の映画館、車庫・倉庫、環境影響の小さいごく小規模な工場など
⑧近隣商業地域近隣の住民が日用品の買物をする店舗等の、業務の利便の増進を図る地域。
建築可能な建物:ほとんどの商業施設・事務所、住宅・店舗・ホテル・パチンコ屋・カラオケボックス、映画館、車庫・倉庫、小規模の工場など
⑨商業地域主に商業等の業務の利便の増進を図る地域。
建築可能な建物:ほとんどの商業施設・事務所、住宅・店舗・ホテル・パチンコ屋・カラオケボックス、映画館、車庫・倉庫、小規模の工場、広義の風俗営業および性風俗関連特殊営業関係施設
⑩準工業地域主に環境悪化の恐れのない工場の利便を図る地域。
建築可能な建物:軽工業の工場、住宅や商店
⑪工業地域主に工業の業務の利便の増進を図る地域。
建築可能な建物:すべての工場、住宅・店舗。
学校・病院・ホテル等は建てられない。
⑫工業専用地域工業の業務の利便の増進を図る地域。
建築可能な建物:すべての工場
住宅・物品販売店舗・飲食店・学校・病院・ホテル・福祉施設(老人ホームなど)等は建てられない。

このうち、民泊(旅館業)の営業ができるのは、次の6つのみです。

 ⑤第一種住居地域
 ⑥第二種住居地域
 ⑦準住居地域
 ⑧近隣商業地域
 ⑨商業地域
 ⑩準工業地域

どんなに民泊に適した立地・構造であっても、その所在場所が住居専用地域にかかっていたら、一切営業することができません。

住居専用地域は文字通り居住のための地域ですから、いきなり民泊施設ができて旅行者がウロウロしはじめたら、近隣の住民は静かに生活できなくなる恐れがありますからね。

候補物件がどのような用途地域なのかは役所で教えてもらえます。大まかなものならインターネット上でも調べることができます。

https://www2.wagamachi-guide.com/tokyo_tokeizu/

まずはこの用途地域を確認することから、民泊許可申請はスタートします。

②その他の条例を確認

用途地域をクリアしたら、その他の地域地区の確認です。
地域地区には以下のようなものがありますが、民泊営業の制限にかかっていないかを調べる必要があります。

 ・特別用途地区
 ・高度地区
 ・高度利用地区
 ・高層住居誘導地区
 ・特例容積率適用地区
 ・特定街区
 ・都市再生特別地区
 ・防火地域、準防火地域
 ・災害危険区域
 ・景観地区(美観地区)
 ・風致地区
 ・特定用途制限地域
 ・駐車場整備地区
 ・緑地保全地域
 ・生産緑地地区
 ・伝統的建造物群保存地区

例えば、都道府県や市町村の条例により、特別用途地区の指定を受けた地域では、民泊の営業が禁止されている場合があります。例えば、学校が多く「文教地区」に指定されている場所では、一切営業ができません。

これらは役所で教えてくれる場合もありますが、役所の窓口担当者も人間なのでミスがないとは限りません。うっかり見落としてしまったということもありますので、必ず自分の目で資料を確認して下さい。当然ですが、役所のミスで見落としていたとしても、オマケで許可が下りるということは一切ありませんからね。

物件の調査には都市計画法や条例などの知識が必要ですが、ここで見落としがあり、内装工事終了後に発覚などということになると、工事費用などがすべてパーになってしまいますから非常に重要です。頑張って勉強して下さい。

③近隣の教育関係機関の調査

次に近隣に教育関係機関がないかの確認です。

近隣とは概ね100m(110m程度)をいいます。「程度」なので、厳密に110m以上離れていても、引っかかる場合がありますので注意が必要です。

教育関係機関とは、旅館業法第3条3項に掲げる施設をいい、具体的には以下の通りです。

学校教育施設

小学校・中学校・高等学校・幼稚園・養護学校などをいいます。大学は含みません。

児童福祉施設

保育所、児童厚生施設、母子生活支援施設、助産施設、乳児院などをいいます。

社会教育施設

図書館、外国人学校、博物館、公園、児童遊園、スポーツ施設等

これらの施設が近隣にある場合、保健所が意見照会をかけます。照会の結果、合理的な反対意見が多い場合などは、保健所の判断で許可が下りない可能性があります。

風営法適用店のように、近隣に保護対象施設があったら即NGというわけではなく、あくまで「こういう施設ができますがどう思われますか?」というお伺いですので、近くに対象施設があったからといって諦める必要はありません。反対が出たとしても、保健所の判断で許可が下りる可能性もあるのです。

問題は、許可申請は「内装工事が完了した後でなければ出来ない」ことです。つまり、工事がすべて完成したあとになって、やっぱり近隣から反対が出たので許可は出せませんということになったら、すべてパーで数百万円規模の損失となりかねません。

では、近くに教育関係機関があったらその物件は諦めるしかないのかというとそうでもありません。内装工事着工前に意見照会をかけてもらう方法もあるので、こうした近くに教育関係機関がある場合は、民泊専門の行政書士等に相談することをお勧めします。