最高裁は19日、預貯金の分配についての判例を変更し、遺産分割の対象になるとの判断を示しました。
亡くなった人の銀行等の預貯金を遺族間でどのように分けるかについて、
これまでは「法律で決められた割合(法定相続分といいます)の割合で機械的に分配すべし」
というのが最高裁の立場でした(分割債権説)。
「機械的」というのは、話し合い(協議)などによらずに、
死亡した時点で自動的に各遺族に分配されるということです。
例えば、父・母・長男・長女の4人家族で父親が死亡し、遺産の中に1000万円の預金があった場合、
母500万円(1/2)、長男・長女各250万円(各1/4)で自動的に分けられます。
しかしこれだと、例えば父親が生前、車を買うための資金として長男にだけ500万円の贈与をしていた場合、
トータルで手にした金額が、母500万円、長男750万円(生前500+法定250)、長女250万円となり、
不公平が生じる可能性があります。今回の事件もこのような内容でした。
今回の最高裁の決定により、自動的に分配されるのではなく、
話し合い(遺産分割協議といいます)により、いくらずつ分けるかを決めなければならなくなります。
もっとも、これまでも全員が合意すれば話し合いで決めることはできましたし、
実務上も、死亡すると銀行口座が凍結され、引き出すには原則として、
相続人全員の実印を押した遺産分割協議書を銀行に提出する必要がありましたから、
実質的には話し合いが必要みたいなものでしたが。
ただ、話し合いがまとまらなかった場合でも、これまでは少なくとも法定相続分はもらえたのに対し、
今後は裁判所が間に入って決めてもらうことになります。
「多少不公平だけど、法律で決まっているのだから仕方ないね」ということがなくなるということです。